「もっと力を抜いて。」
演奏をしていると、一度は言われたことがある言葉です。
でも、その言葉を聞いて、
「よし、力を抜こう。」
と思っても、気づけばまた肩に力が入り、腕が固くなり、
身体全体が緊張してしまう。
そんな経験はありませんか。
実は、力んでしまう人ほど、力を抜こうと努力しています。
だから私は、
「力を抜こう」と頑張っている人を見るたびに思います。
その人は悪くない。と。
力みは「悪いクセ」ではない
力みというと、
「余計な力」
「直したほうがいいもの」
そんなイメージを持つ人が多いかもしれません。
もちろん、演奏中に必要以上の力が入ることで、身体へ負担がかかることはあります。
でも、力みそのものが悪いわけではありません。
身体は、理由があるから力を入れています。
つまり、力みは原因ではなく、身体からの結果なのです。
身体は頑張ろうとして力んでいる
例えば、
足元が不安定な場所へ立つと、私たちは無意識に身体へ力を入れます。
転ばないように。
身体を支えるために。
これは特別なことではありません。
身体にとって、とても自然な反応です。
演奏中も同じです。
身体が「このままでは安定しない」と感じると、どこかで補おうとします。
肩を固める。
腕で支える。
指先へ力を入れる。
これは演奏が下手だからでも、意識が足りないからでもありません。
身体が一生懸命、演奏を続けようとしている反応なのです。
「力を抜く」ことが難しい理由
ここで一つ考えてみてください。
身体が支えようとしている状態で、「力を抜いてください。」
と言われたら、どうでしょう。
身体からすると、「支えを失ってしまう。」という不安が生まれます。
だから、一瞬抜けても、すぐにまた力が戻ります。
これは意志が弱いからではありません。
身体が「今は必要だ」と判断しているからです。
つまり、身体が安心できる状態にならない限り、
力みだけを取ろうとしても、根本的には変わりません。
力みを責める必要はない
私は、演奏中に力んでしまう方へ、「もっと脱力しましょう。」
とはあまり言いません。
それよりも、「なぜ身体は頑張っているのだろう。」
という視点を大切にしています。
身体には、必ず理由があります。
その理由を見つけてあげること。
それが、力みを減らす第一歩になると考えています。
力みをなくそうとするほど、力みは強くなることがある
「力を抜こう。」
そう思えば思うほど、身体が思うように動かなくなることがあります。
それは、身体が反抗しているわけではありません。
身体には、「今は力が必要だ。」という判断があるからです。
その状態で無理に力だけを抜こうとすると、身体はさらに不安を感じます。
すると、安心するために、もう一度力を入れようとします。
だから、「脱力を頑張る。」
という考え方だけでは、根本的な解決にはつながりません。
身体が安心すると、力みは自然に減っていく
力みを減らすために大切なのは、
身体へ「頑張らなくても大丈夫だよ」と教えてあげることです。
無理に脱力するのではありません。
身体全体が自然に支え合える状態になると、一か所だけが頑張る必要がなくなります。
すると、
肩が少し軽くなる。
腕が動かしやすくなる。
身体全体が今までより楽に感じる。
こうした変化が少しずつ現れてきます。
力みを取ったのではなく、力まなくても動ける身体へ近づいているのです。
演奏中だけ変えようとしても難しい理由
演奏中だけ、
「今日は力まないようにしよう。」
そう意識しても、なかなか続かないことがあります。
それは、演奏の時間だけ身体を変えることは難しいからです。
身体は、毎日の生活の中で覚えた動きを一番自然なものとして使います。
普段の身体の使い方がそのまま演奏にも表れるため、演奏中だけ意識を変えても、身体はいつもの動きへ戻ろうとします。
だからこそ、演奏だけを切り離して考えるのではなく、身体全体を育てるという視点が大切になります。
力みは「敵」ではなく、身体からのメッセージ
私は、力みを悪いものだとは考えていません。
力みは、「ここで身体が頑張っています。」というメッセージです。
その声を無視して無理に力だけを抜こうとするのではなく、
なぜ身体が頑張っているのかを知ること。
そこから身体を見直していくことで、演奏も少しずつ変わっていきます。
身体は、とても正直です。
安心できる身体になれば、必要以上の力は、少しずつ手放せるようになります。
演奏を変えたいなら「力み」と戦わなくていい
演奏中に力んでしまうことを責める必要はありません。
大切なのは、「どうしたら力を抜けるか。」
ではなく、
「どうしたら身体が安心して動けるか。」
という視点です。
身体が安心して動けるようになると、結果として、必要以上の力は自然と減っていきます。
だから私は、力みをなくすことではなく、
力まなくても動ける身体を育てることを大切にしています。
それが、演奏を長く楽しみ、自分らしい表現を続けていくための土台になると考えています。
身体が安心すると、必要以上の力は自然と減っていきます。では、その身体はなぜ疲れにくくなるのでしょうか。
次回は「上手い人はなぜ疲れないのか」についてお伝えします。
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